『SAKAMOTO DAYS』27巻に感じた「強さの欠陥」――精神論では補えないプロセスの重要性

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アクションのキレ、息をもつかせぬスピード感、そして唯一無二のキャラクターデザイン。 『SAKAMOTO DAYS』が、現代のジャンプ作品の中でもトップクラスの純粋な「面白さ」を誇る漫画であることは、今さら言うまでもありません。私自身、最新刊が出るのを毎回心待ちにしているファンの一人です。

しかし、ようやく発売された第27巻を読み終えたとき、私は今までにない戸惑いを感じてしまいました。物語は大きな局面を迎え、主人公・坂本太郎が長い眠りからついに目覚めるという、ファンなら誰もが熱くなるはずの場面。それなのに、読み進めるほどに気持ちが冷めていく自分に気づいたのです。

その原因を一言で言えば、復活した坂本の「強さ」に納得のいく理由が見当たらなかったこと。 かつての仲間との再会や過去の回想を経て、精神的に吹っ切れたことで一気にパワーアップを遂げる――。この「精神論による覚醒」という展開に、私は強い違和感を抱かざるを得ませんでした。

かつて私たちが熱狂した名作漫画には、必ずと言っていいほど「修行」という名の泥臭い積み上げがありました。今回は、あえて厳しい言葉を使いたいと思います。27巻の坂本に見えた「強さの欠陥」、そして私がなぜこれほどまでに「プロセスの重要性」にこだわるのかについて、深掘りしていきます。

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なぜ私たちは「修行」に熱狂するのか

納得感のある強さには、必ずと言っていいほど「等価交換」のプロセスが存在します。

例えば、『SLAM DUNK』の2万本シュート。 あの気が遠くなるような反復練習を読者が一緒に見守ったからこそ、山王戦でのあのラストシュートに、言葉にできないほどの重みとカタルシスが宿りました。

あるいは、『HUNTER×HUNTER』のグリードアイランド編での念修行。 「なんとなく強くなった」のではなく、新しい技術を習得するためのロジックと訓練が描かれることで、その後のバトルに知的な戦略性とワクワク感が生まれるのです。

『バクマン。』でもそうです。漫画を描くスピードを上げるために、ペン先を変え、工夫を凝らし、肉体的な限界に挑む。そうした「研鑽の跡」が見えるからこそ、読者はキャラクターの成長を自分のことのように誇らしく感じることができます。

翻って、最近の漫画に目を向けると、過去回想や一時の感情の爆発だけでパワーアップしてしまう展開が目立ちます。もちろん、それが「王道」として機能する場合もありますが、一度は現役を退き、ブランクを抱えたはずの坂本太郎という男には、もっと「泥臭い再起」を期待していました。

精神的な吹っ切りは、あくまで扉を開ける「きっかけ」に過ぎません。その扉の先で、どう肉体を追い込み、どう全盛期の勘を取り戻したのか。そのプロセス(過程)を飛ばしてしまった今回の覚醒は、私にはどうしても「土台のない空っぽの強さ」に見えてしまったのです。

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最初から「最強」であることの面白さ

もちろん、私は「全ての漫画に修行が必要だ」と言いたいわけではありません。世の中には、プロセスを必要としない「最初から最強」な主人公が活躍する傑作も数多く存在します。

例えば、『ワンパンマン』のサイタマや、『モブサイコ100』のモブ、あるいは『斉木楠雄のΨ難』の斉木。彼らは物語のスタート時点で、すでに敵なしの圧倒的な力を手にしています。しかし、これらの作品に対して「修行が足りない」と不満を持つ読者はいないでしょう。

なぜなら、これらの作品における「強さ」は、物語を攻略するための手段ではなく、「その圧倒的な力を持ってしまった者が、どう生きるか」を描くための「前提条件(ルール)」だからです。最初からゴール地点にいる者が、力では解決できない日常や内面的な葛藤にどう向き合うか。そのギャップを楽しむのがこれらの作品の醍醐味であり、そこに修行のロジックは必要ありません。

しかし、『SAKAMOTO DAYS』は違います。 かつて最強と呼ばれた男が、引退してブランクを抱え、その「衰え」があるからこそ生まれる緊張感や工夫が物語の魅力だったはずです。一度、努力や戦略が必要な「バトル漫画の土俵」に上がっている以上、ピンチの時だけ「かつての勘を精神論で思い出した」とショートカットされてしまうと、これまで積み上げてきたバトルの緊迫感が一気に損なわれてしまいます。

「最強設定の作品」と「成長を描く作品」。この二つの境界線が曖昧になり、都合よく「覚醒」という言葉で片付けられてしまうことに、私は一人の読者として危機感を覚えるのです。

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『鬼滅の刃』に感じた「納得感」の欠如

最近のヒット作における同様の傾向として、私はどうしても『鬼滅の刃』に対しても否定的な感情を持ってしまいます。

この作品において最も納得がいかなかったのが、後半になるにつれて多用される「痣」や、土壇場で発現する新しい「呼吸」の扱いです。それまで必死に戦っていたキャラクターたちが、ある種の発現条件を満たした途端、修行や理論に基づかない圧倒的なパワーアップを遂げてしまう。

もちろん、物語の盛り上げ方としては正解なのかもしれません。しかし、私が見たいのは、窮地に立たされた時に「隠されていた才能」が目覚める奇跡ではありません。絶体絶命の瞬間でも、これまでに積み上げてきた技術や、血の滲むようなトレーニングの中で掴み取った「一筋の勝機」を、自らの意志で手繰り寄せる姿が見たいのです。

『鬼滅の刃』に見られる「持たざる者が、何らかのきっかけで突然『選ばれし者』の力を手に入れる」というパターン。これは今回の『SAKAMOTO DAYS』における坂本の覚醒にも通じる、「プロセスの軽視」に他なりません。

「なぜ勝てたのか?」という問いに対して、精神論や運命論ではなく、ロジカルな「技術と努力の積み上げ」で答えてほしい。それは、名作と呼ばれた多くの少年漫画が、私たち読者に示してくれた誠実さだったのではないでしょうか。

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次巻に期待すること

『SAKAMOTO DAYS』は、本来その「誠実さ」をアクションの描写力で示せる稀有な漫画だと思っています。だからこそ、27巻で見せたような安易な覚醒が、これまでの名シーンさえも霞ませてしまうのではないかと危惧しています。

アクション漫画において「どう強くなったか」は、「どう戦うか」と同じくらい重要な要素です。次巻では、精神世界での対話ではなく、坂本太郎という一人のプロフェッショナルが、自らの肉体と技術を再び研ぎ澄ませていくような、説得力のある「再起」を見せてくれることを切に願っています。

ギャン中現場監督が送る副業とマンガブログ

マンガ大好き社畜。残業代が1円も出ないが100時間越えの化石企業に勤めております。スポコン系、バトルマンガが大好きです。

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